羽毛布団EC事業者様向け 生成AIワークショップ実施レポート(ハンズオン研修)
はじめに
2026年1月26日(月)、羽毛布団の製造・EC販売を手がける新津様を対象に、生成AIの実践的な活用と、ECサイトでの販促業務の効率化を探る体験型ワークショップを実施いたしました。
▼新津さまECサイト(楽天市場)内ショップ
https://www.rakuten.co.jp/suyasuya/
本ワークショップは、一方向の座学研修ではなく、「自分の手で触り、自分の業務で試す」ハンズオン形式を全面的に採用しています。インプット講義で知識をインプットした直後に、参加者自身がツールを操作するワークを行う構成とすることで、「聞いて終わり」ではなく「体験して腹落ちする」学びを実現しました。今まで当社で実施してきたのはいわゆる「集合型研修」のスタイルでしたが、今回はよりじっくりサポートするハンズオン形式の研修となりました。
当初は3名程度の参加を想定していましたが、当日はECショップの商品ページ作成・受注対応を担当される方、出荷業務を担当される方、関連事業を運営される方など計6名にご参加いただきました。AI使用経験のレベルは幅広く、10月頃からChatGPTを翻訳や商品ページ作成に日常的に活用されている方、SNSのルール作りやマスコットキャラクター生成にAIを使い始めた方がいる一方で、「全く触ったことがない」「聞いたことはあるが試したことがない」という方もいらっしゃいました。共通していたのは、「商品ページをもっと良くしたい」「日々の業務を効率化したい」という強い関心でした。
本ワークショップでは、これらのニーズに応え、以下の3点を主なゴールに設定しました:
生成AIの基礎を理解し、安全かつ効果的な使い方を体験すること
自分の業務での活用イメージができるようになること
画像生成AIを使って、実際にEC向けのバナーや商品イメージ画像を作成イメージが持てるようになること
加えて、社員・スタッフの生成AIリテラシーを底上げし共通理解を形成すること、ECサイトの勝ちパターンおよび自社の強みを知ることで改善のイメージを持つことも、本ワークショップの重要な目的として位置づけました。
ハンズオン形式を採用した理由
生成AIは「知っている」と「使える」の間に大きなギャップがあるツールです。座学で機能や概念を説明するだけでは、参加者が実際に業務で使い始めるまでの心理的ハードルが下がりません。
本ワークショップでは、インプット(講義)→ ワーク(実践)→ 共有(振り返り)のサイクルを繰り返す構成を採用しました。この「学んだら、すぐやってみる」サイクルにより、以下の効果を狙いました:
心理的ハードルの解消:「難しそう」「自分には無理」という先入観を、実際に手を動かすことで払拭する
即時の成功体験:AIが自分の指示に応じて文章や画像を生成する体験を通じて、「自分でもできる」という実感を得る
個別のつまずきへの対応:少人数でのハンズオン形式だからこそ、ファシリテーターが一人ひとりの画面を見ながらサポートできる
参加者同士の学び合い:全員での共有タイムを設けることで、「自分とは違う使い方」「こんな回答が返ってきた」という横の気づきが生まれる
プログラム概要
本ワークショップは、約4時間のプログラムで実施しました。インプット講義とワークを交互に配置し、学びと実践を往復する設計としています。

プログラム全体の約半分をワーク(ハンズオン)に充てており、参加者が自分の手でツールを操作する時間を十分に確保しました。
インプット講義の概要
インプット①:生成AIの基礎知識
生成AIとは何かという基本概念から入り、従来のAI(分析・判断)と生成AI(新しいコンテンツを作り出す)の違いを整理しました。キーワードとして「従来のAI=分析して判断するAI」「生成AI=新しく生み出すAI」という対比を示し、参加者の理解を促しました。
また、生成AIの種類と用途として、大規模言語モデル(LLM)、画像生成モデル、音声生成モデル、動画生成モデルを紹介するとともに、業務で活用できる特化型ツールのデモンストレーションも行いました。

インプット②:新津さんの強みと競合分析/生成AIのリスク
ディープリサーチによる自社分析・競合分析
Geminiのディープリサーチ機能を使い、事前に実施した新津さんの強み分析と競合分析の結果を共有しました。まずディープリサーチの仕組み(AIがウェブサイトを巡回し、分析レポートを自動作成する機能)を説明した上で、従来は人間が何時間もかけて行っていた調査が数分で完了する点を強調しました。
ポイント:プロンプトをAIに作ってもらう
ディープリサーチの使い方として、「プロンプトを全部自分で考えることをまずやめる」ことが第一歩であると紹介しました。実際の手順として、最初に投げたプロンプトは非常にシンプルで「ECサイトで羽毛布団を販売しています。自社の強みと競合の違いを調べてください。プロンプトを書いておいてあげて」という程度のもの。これに対してAIが「対象業界は?」「会社はどこにありますか?」「主な競合は?」「知りたいことは?」と質問してくるので、それに答えていくことでプロンプトが精緻化されていく手法を実演しました。
また、競合を設定し、ゴールは「差別化要因の発見」と指定。AIが生成したプロンプトをそのままディープリサーチにかけ、約50件のサイトを参照して5〜10分で分析レポートが生成されました。
発見された自社の強みとして、以下が抽出されました:
工場直販モデルによる価格優位性(大手競合と比較して40〜50%安価)
電話がすぐに繋がる顧客対応力(「オンライン×対面」というキーワード)
一生涯のアフターサービス(リフォーム対応含む。「34年前に数十万した羽毛布団が32,000円で新品同様になって帰ってきた」等のレビュー)
リピーターの多さと高い顧客満足度(「12年前から愛用し、依頼できる職人さん」等)
「匂い」の不満が新津さんでは見られないという品質面の優位性
参加者からは「大体合っている」という反応があり、AIによる分析が実態と一致していることが確認されました。また、レビュー分析の結果を受けて、顧客対応履歴の蓄積と活用(次回電話が来た時に前回の対応内容をすぐ参照したい)という具体的な業務課題も共有されました。

生成AIのリスクと注意点
参加者の安全な活用を支援するため、特に注意すべき4つのリスクを共有しました。
1. 情報漏洩リスク: 生成AIに入力した内容はサービス提供者のサーバーに送られ、学習や保管の対象になる可能性があるため、機密情報や個人情報は入力しないこと。対策として、Enterprise版や閉じた環境の利用、「何を入力してよいか/いけないか」のルール化を推奨しました。
2. 著作権・知財リスク: AIが生成した文章や画像は、学習元の著作物の影響を受けることがあり、既存の作品やキャラクターに酷似すると著作権侵害や商標権侵害でトラブルになる可能性があること。
3. 誤りや偏り(ハルシネーション): 生成AIは「最もらしい嘘」を作ることがあるため、正確な情報を伴うもの(会計情報など)はそのまま使わず、必ずファクトチェックを行うこと。AIの出力は「仮説」であり、人が最終判断を下すべきであるという考え方を共有しました。一方で、企画案を考えてもらう、壁打ち相手になってもらう、大きな傾向を掴むといった用途には非常に相性が良いことも併せて伝えました。
4. 依存リスク: AIに丸投げせず、成果物に対して自分で責任を持ち、思考力を維持すること。「活用と依存の線引き」について実感を伴った議論が生まれました。
ワーク①の段階で参加者が実際に著作権のあるキャラクター(ミッフィー風の猿、鬼滅の刃風のイラストなど)を生成する場面があり、リスク講義でその場で具体例として共有。「楽しいけれど商用利用はNG」「元々著作権があるものを元データにしてはいけない」という線引きを、体験を通じて理解いただきました。このように、ハンズオン形式だからこそ「やってみて気づく」リスク学習が実現できた場面でした。

インプット③:NanoBananaを活用した画像の作り方
次の講義としては、Google の画像生成AI「NanoBanana(Imagen)」のインプット講義を行いました。
NanoBananaの主な特徴として3点を紹介:
キャラクター・商品の一貫性:同じ商品を様々なシーンで表現でき、生成される顔や特徴がぶれない
高品質なテキスト生成:画像内の文字がくっきり読め、バッジやバナーなど複数の要素を1つの画像内に組み込んで生成できる(従来の画像生成AIが苦手としていた領域)
圧倒的な生成スピード:簡単な画像なら数秒で生成可能
事前に制作した活用事例(3つ):
事例1:商品イメージ画像の生成 — 白い羽毛布団のベッド画像を生成 → 布団の色をピンクに変更 → 寝ている人物を追加 → 起き上がって伸びをしているポーズに変更、と段階的な編集を実演
事例2:既存画像の編集・加工 — 布団の画像をクリスマス仕様に変更(布団の色変更、背景にクリスマスツリーやプレゼントを追加。指示していないサンタの置物まで配置する「遊び心」も見られた)
事例3:テキスト入りバナーの生成 — ランキング1位バッジ付き画像を生成。参加者から「めっちゃいい」「これを自分で作ったら結構大変」と好評
また、AI画像の限界についても率直に共有しました。 「100%AIで完成させるのは現状ではまだ難しい」「最終的にはデザイナーの手も必要になる」としつつ、「イメージを作るところまでは十分に使える」「完璧でなくても、アイデアの具体化やイメージ共有のツールとして非常に有効」というスタンスで、参加者の期待値を適切に設定しました。

ワーク内容詳細
【ワーク①】Geminiを使ってみよう
ワーク①は、参加者全員が生成AIに初めて触れる(あるいは改めて基本から触れる)ためのハンズオンです。「Geminiを触ってみよう」「自分のプロンプトを作ってみよう」「グループで共有しよう」の3ステップで構成しました。
ワーク開始前に、参加者全員のデバイス・Googleアカウントの確認を行いました。スマホでの参加者、PCでの参加者と環境が異なる中、個別にサポートしながら全員がGeminiを使える状態を整えました。
まず、全員が同じステップを踏むことで、操作に不慣れな方も安心して進められるよう設計しました:
ステップ1:挨拶してみよう(「こんにちは」と入力)
ステップ2:質問してみよう(「富士山の標高を教えて」)
ステップ3:身近な相談をしてみよう(「今日の夜ご飯の献立を考えて」)
ステップ4:文章を加工してもらおう(カジュアルなメモを丁寧な文章に変換)
ステップ5:創作を頼んでみよう(かわいいサルのイラスト生成にチャレンジ)
ステップ2では、富士山の標高の回答について「これが本当に正しいのか調べるべき」という参加者の声があり、ファシリテーターから「データについては基本的に裏取りした方がいい」「鵜呑みにしない」というアドバイスを自然な流れで伝えることができました。また、「その回答を60点として100点にしてください」という追加指示の技法や、「小学生でもわかるように」という条件付けの方法なども参加者から自発的に試され、対話的な学びが生まれました。
ステップ4では、「お客様へのメールの返信文を丁寧にしてもらう」という実務に直結した使い方を試す参加者もおり、業務への活用イメージが早い段階で芽生えていました。
ステップ5のイラスト生成では、サルのイラストのクオリティの高さに参加者から驚きの声が上がりました。
続いて、テーマ選び → 条件の付け加え → やり取りの重ねという流れで、自由にプロンプトを作成する時間を設けました。子供の誕生日プラン、レシピ、キャラクター作成など、各自が興味のあるテーマで生成AIとのやり取りを体験しました。なお、この段階では業務に関するプロンプトは入力しないよう案内し、まずは「触る楽しさ」を体感することに集中してもらいました。

【ワーク②】作りたい参考画像を選ぼう
ワーク②は、後半の画像制作ワークに向けた準備のハンズオンです。
まず、ECサイトの羽毛布団カテゴリのランキング上位ページを分析し、共通する構成パターン(勝ちパターン)を整理・共有しました。実際のランキング上位ページ(22,999円〜59,999円帯の商品)を画面で見ながら解説しました。
発見された王道パターン:
ランキングバッジ・累計販売数の訴求(例:「40万突破」等の大きな数字)
レビュー評価の数字をインパクトのある形で表示
素材・機能性の説明(軽い・温かい・洗える等)
女性が気持ちよさそうに寝ているビジュアル(ほとんどのページで共通)
ふわふわ感・ボリューム感を伝える商品写真
比較画像(一般的な羽毛布団 vs 自社製品)
上から下へストーリーで繋げる構成
スマホ対応の重要性: 参加者との対話の中で、購入者の多くがスマホで閲覧していることが確認されました。実際にECサイトでの表示がPC用の長方形画像とスマホ用の正方形画像で異なること、スマホでは横スワイプで画像を切り替える操作が主流であることなどが話し合われました。現状のページでは文字が小さく読みにくいケースがあり、スマホビューでの見やすさが改善ポイントとして挙がりました。
購買行動についての議論: 参加者間で「布団を買う時、何を見るか」という消費者視点の議論が自然に発生しました。「ランキングから入って、レビューを見て判断する」「知識がないとスペックの違いが分からないので、結局レビューが頼り」といった生の消費者感覚が共有され、自社の商品ページ改善のヒントとなりました。
これらの勝ちパターンを踏まえた上で、参加者には他社ページから「こんな画像を作りたい」という参考画像を3枚程度ダウンロードしてもらいました。「難しく考えず、直感で"いいな"と思うものでOK」「文字部分は気にせず、写真・イラスト部分に注目」「テキストがあまり入っていない方が今日のワークでは作りやすい」と声をかけ、迷っている参加者には個別にサポートしました。
【ワーク③】作りたい画像をつくってみよう
ワーク③は、本ワークショップのクライマックスとなるハンズオンです。ワーク②で選んだ参考画像をもとに、NanoBananaで実際にEC向けの画像を制作しました。
活用した手法:
参考画像をGeminiに投げて「この画像を生成するためのプロンプトを教えて」と指示
出力されたプロンプトを使ってNanoBananaで画像を生成
生成された画像に対して編集指示を追加(背景変更、文字追加、人物の表情変更等)
ハンズオンだからこそ得られた学び:
画像の編集指示は一度にまとめて出す方が良い(1つずつ直すと画像が劣化する)
日本語テキストの生成はNanoBanana Proを使うと精度が大幅に上がる
うまくいかない場合はチャットをリセットして新しく始めた方が良い結果が出る
ポーズ指定(参考画像を渡す)を活用すると、より意図に近い画像が作れる
実物写真との組み合わせが最も効果的
これらの学びは、マニュアルを読むだけでは得られないものです。参加者が自分の手で試行錯誤し、ファシリテーターがリアルタイムでアドバイスを行うハンズオン形式だからこそ、「使いこなすためのコツ」として身体的に習得できたポイントでした。
参加者の気づき・学び
ワークショップのクロージングでは、参加者一人ひとりから一言コメントをいただきました。
可能性の発見
「こんなことまでできるんだ」という驚きがあった
誤解していた部分が結構あり、実際に触ってみて理解が深まった
具体的にステップを踏んで教えてもらえたので、受講する前よりは使いこなせそうなイメージが持てた
画像生成への手応え
文字を取ったり、背景を変えたり、実務で使える加工ができることが分かった
テキスト関係よりも、まずは画像加工から業務に取り入れたい
商品ページの画像ブラッシュアップにすぐ活用できそう
プロンプト設計の重要性
指示は具体的に、一度にまとめて出した方が良いということが実感できた
AIへの指示の出し方次第で、結果が大きく変わることが分かった
明日から業務に取り入れたいこと
ECサイトのスマホページの画像ブラッシュアップ(最優先として確認)
お客様対応時のテキスト作成補助(メール返信等)
商品の魅力をもっと伝えるための画像制作
リフォーム用チラシの改善への活用
まとめ
本ワークショップは、羽毛布団のEC事業者・新津様に対し、生成AIの基礎から、ECサイトでの販促業務に直結する具体的な活用法までを、ハンズオンワークを軸としたプログラムで体験いただくことができました。
座学中心の集合研修ではなくハンズオン形式を採用したことで、「聞いただけで分かった気になる」のではなく、自分の手で触り、つまずき、工夫し、成功体験を得るという一連のプロセスを全参加者が経験できました。特に、ワーク①でのGemini体験で「AIと会話する感覚」をつかみ、ワーク②で自社の改善イメージを具体化し、ワーク③で実際にEC向け画像を制作するという段階的な構成が、参加者の理解と自信を着実に積み上げる効果をもたらしました。
また、ディープリサーチによるレビュー分析で「電話がすぐに繋がる」「従業員が親切」「一生涯のサポート」という強みが可視化されたことも印象的でした。25年にわたって培われたお客様との深い信頼関係こそが最大の差別化ポイントであり、ワークショップの最後には「こんなにちゃんとお客さんに寄り添った対応をしていることが、今のサイト上では十分に伝えられていない」という気づきが参加者・ファシリテーター双方から共有されました。この信頼関係をいかにオンライン上で伝えていくかが今後の大きなテーマとなります。
AI単体で完璧なものを作ることはまだ難しいものの、アイデアの具体化やイメージの共有には十分に活用できることが確認されました。今後は、ワークショップでの学びを活かし、ECサイトの商品ページのブラッシュアップやリフォームチラシの改善、顧客対応履歴の活用など、具体的な業務改善に生成AIを取り入れていただけたらと考えております。